母の着物を、息子の七五三に。
先日「母の着物を、息子の七五三で着られたら……」
と、お着物を持ってご来店くださったお客様がいらっしゃいました。
以前、私がある会社様で講話をさせていただいた際に聞いてくださっていた社員の方でした。
あれから2年ほど。
時間が経ってから、こうして着物のことを思い出して訪ねてくださったことが、とても嬉しく感じました。
お母様の着物を着るときに、確認する3つのこと
お母様やおばあ様から譲られた着物を着たいというご相談をいただいたとき、ななほうでは大きく3つのことを確認します。
① 寸法
② 汚れや状態
③ 帯や小物とのコーディネート
今回のお着物も、実際に羽織っていただきながら確認しました。
お母様と娘様では、身長や体型が違って当然です。
だからこそ、ご身長だけで「着られる・着られない」を決めるのではなく、実際に羽織った姿を見ながら一緒に考えていきます。
多少の違いであれば、着付けで調整できることもあります。
そして今回は、寸法も状態も問題なく、七五三に着ていただけることが分かりました。
まずは、ほっとしました。
家にある着物を、もう一度着るということ
私は、新しいお着物をお求めいただくことも、もちろん大切なことだと思っています。
一方で、お家にすでにある着物を、もう一度着ていただくことも、とても大切にしています。
それは単に「あるものを使う」ということではありません。
七五三を迎えるお子様にとって、家族のつながりを自然に感じるきっかけになると思うからです。
「今日のお母さん、いつもと違う」
「これが着物っていうんだ」
「その着物、おばあちゃんが着ていた着物なの?」
そんな小さな会話から、
自分のお母さんにもお母さんがいて、
その前にも家族がいて、
今の自分につながっている。
そんな自分のルーツを、子どもなりに感じていただからと思っています。
そして、いつの日か、
「お母さんが着ていたものを、私も着たい」
そんなふうにつながっていくかもしれません。
私は、七五三や成人式、お宮参りといった人生の節目には、そうした命のつながりや家族の愛情を、伝える役割もあると思っています。
「しばらく使わないけれど、きれいにしておきたい」
お母様の訪問着を確認したあと、お宮参りの着物についてもご相談をいただきました。
お兄さまが使われ、
甥っ子さまが使い、
そしてご自身のお子様も使ったお宮参りの着物。
「当分、出番はないけれど、きれいにしておきたいんです」
そうお話ししてくださいました。
私は、その言葉がとても素敵だなと思いました。
今の暮らしでは、
「1年使わなかったものは手放す」
「今使わないものは持たない」
そんな考え方を耳にすることも増えました。
もちろん、それが合うものもあります。
けど、着物のように長く持つことを前提につくられたものは、一年、二年という時間軸だけでは測れないのではないかと思っています。
今は使わなくても、
10年後、20年後に、また家族の誰かが袖を通すかもしれない。
きちんと手入れをしながら受け継いでいけば、着物はとても長く残していくことができます。
そしてその一枚が、
「これは、おばあちゃんが着ていた着物だよ」
「これは、あなたのお宮参りにも使ったんだよ」
と、家族の記憶を話すきっかけになっていく。
着物そのものを残すことだけが目的ではなく、
着物を通して、家族のつながりを残していく。
私は、そこに着物の大切な役割の一つがあると思っています。
お客様とそんなお話をしながら、私自身も、もっとこういうご案内ができるようになりたいと思いました。
よく商いの世界では、
「お客様に育てていただく」
という言葉があります。
ななほうを始めてから、その意味を少しずつ実感するようになりました。
私が何かをお伝えしているようでいて、お客様の着物にまつわるお話や、ご家族への想いから、私自身が教えていただくことばかりです。
一つひとつの出会いを当たり前と思わず、
感謝を忘れずに。
そして、着物を売ることだけではなく、
今あるものを活かし、整え、次へつないでいくこと。
そんなお手伝いのできる着物店でありたい。
改めて、そう思った一日でした。